Reexamination of upland settlements in the Yayoi period

in the Japanese archipelago

Principal Investigator:Morioka Hideto

 

高地性集落Web地図

https://www.google.com/maps/d/edit?mid=15MLa92cj1e8n4yWq2ebyQlIT9VbGJkI&usp=sharing

 

本研究会(「弥生時代高地性集落の列島的再検証」,代表:森岡秀人)では,20202023年度において各地の高地性集落のデータベース化を進めて参りました。

 膨大なデータであるため入力・整理作業はなお途中の段階であり,精度・内容面にもばらつきがありますが,公開シンポジウム(202432日,同志社大学今出川キャンパス)の開催に合わせて,これまでの成果を「Web地図」(Web-GIS)として試験的に共有・公開いたします。

 以下の注意事項を必ずご確認の上,ご利用ください。

 

【注意事項】 ※重要

Ÿ   いくつかの地域については現在調整中につき未掲載の場合があります。

Ÿ   未入力・入力途中の遺跡も一定数あります。今後データ全体の精査・修正等の作業を予定しており,「試験版」という位置付けを十分考慮の上,閲覧・利用ください。

Ÿ   当地図に使用したデータは,各地域の担当者の協力を得て発掘報告がなされている遺跡を中心に集約したものです。必ずしも研究会全体の合意によるものでなく,また今後データの追加(削除)が随時行われる見込みですので注意してください。

Ÿ   基本的には研究会関係者および公開シンポジウム参加者の利用のみを想定しています。個人的な閲覧・利用に限ることとし,SNS等での公開・拡散などは控えてください。なお,今後「正式版」を公開する予定です。

 

Ÿ   当地図の公開は一定期間に限ります。予告なく公開を終了する場合がありますが,ご了承ください。

 

 

シンポジウムを開催します。ふるってご参加ください。

 

弥生時代高地性集落研究 公開シンポジウム

「高地性集落」論のいま

 ―半世紀ぶりの研究プロジェクトの成果と課題―

 

                 日 時 令和6年3月2日(土)9:3017:30(9:00開場)

                 会 場 同志社大学今出川キャンパス良心館一階、RY107教室

                      (聴講無料、事前申込不要、定員300名)

                     終了後 懇親会を開催します(チラシをご覧ください。)

                   ※シンポジウム参加には申込は不要、先着順です。懇親会に参加いただける方のみ下記QRコードからお申込みください。

 

         JSPS科学研究費(基盤研究B)「弥生時代高地性集落の列島的再検証」(研究代表者:森岡秀人)

          問い合わせ先 (公財)古代学協会 麻森敦子 075-252-3000  (yayoikaken@gmail.com)

 

ダウンロード
「高地性集落」論のいま チラシ
2024.1.31修正版
チラシ 修正済2024.1.31-圧縮.pdf
PDFファイル 238.9 KB

高地性集落とは

 

 

 弥生時代に形成された本格的な農耕文化は、水稲栽培を主体的要素とする農業生産の開始・発展という経済発達段階の歴史的過程のなかでとらえられなければならないものである。水稲栽培、すなわち水田経営は水利の便もよい沖積平野をその生産基盤とする性格を有している。弥生時代の水田経営とてもその例外の何ものでもなく、より水利に恵まれた地域に限られていたとみてよい。当然、縄文時代の遺跡立地とも大きな違いを生じ、集落は水田経営とそれに伴う日常の居住にふさわしい沖積平野面の微高知高地ないしはそれに接続する山麓下の扇状地などに集まるようになる。このような集落を一般的に低地性集落と呼んでいる。

 このような時代にあって、水田経営にはあまりにもふさわしくない山頂尾根や山腹中に集落が発生する。これを低地性集落に対して、高地性集落とか高地性遺跡と呼んでいる。高地性集落は単に海抜高度が高いものを呼ぶものではなく、沖積平野面からの比高差の大きなものを高地性集落と呼んでいる。しかし、全国的に一律には論ずることが不可能である。 

高地性集落研究史

 弥生時代研究史において関心の高い位置を占めてきた高地性集落遺跡の研究は、立地条件の特異性も手伝って、昭和時代戦前から森本六爾や樋口清之をはじめ、著名な考古学者が遺跡踏査を原点とする基礎的調査と論説を残し、足掛かりをなしてきた。その後、後学者たちは農耕社会の本格的研究、生産の場である水田跡の実証や農耕具体系の掌握を進めることにより、看過できない視点を明らかにしていったと言える。戦後は、各地で本格的な発掘調査が行われるようになり、山口県を中心に小野忠凞による西部瀬戸内地域、島田川流域の歴史地理学的な研究視角が加わり、農業を基盤としたはずの弥生時代の社会の人間の居住における垂直的遷移運動の異常現象としての考察がおおいに前進し、その歴史的背景として、中国史書などに記された「倭国乱」(『魏書』東夷伝・『後漢書』倭伝など)との関係性など、当時の対外関係や地域動向を射程に入れ、集落立地の人文現象の枠組みにおいて適合性に関し、史料との連結作業などの側面が飛躍的に進展をみた。

それらの研究は、1960年代に恒常的に取り組まれ、日本列島で勃発した弥生時代後半期の動乱が引き起こした集落の一時的な高所選地と争乱の具体的痕跡、証左としての一方的理解のみが強調される研究動向へと展開した。具体的資料の増加と研究の蓄積により、1970年代には全国レベルでこの方面の研究の動きが注目され、総合的研究の兆しも芽生え始め、各地で研究者の実数も着実に増加して実践されていった。それらを牽引した当時中堅、若手の考古学者が小野忠凞・森浩一・佐原真・田辺昭三・石野博信・小田富士雄・岡本健二・間壁忠彦・瀬川芳則・東森市良・都出比呂志・寺沢薫・森岡らであり、戦前から弥生社会、土器の研究に邁進してきた小林行雄などもこうして頭角を現してきた問題の核心を吸引しつつの見解や解釈を著書のいくつかで述べるが、古墳時代の開始を説明する視点、連結作業などを都出比呂志が引き継ぐ経過を示すほかは、時代区分を超越した実りある議論はほとんど進展してこなかった。

 

農耕社会にとって全く不便きわまりない立地を示す高地性集落遺跡は当初考えられていたほど特殊な性格の遺跡ではなく、列島が農耕社会に入り覆われたからこそ、必然的な成立を余儀なくされたものであり、古墳出現の動向を射程にできる弥生時代後期段階や終末期段階の遺跡分布と機能が議論となる問題関心の漸次的な移行は重要な変化の一つであったと考える。

『高地性集落の研究』

1979

発行:学生社

小野忠熙 編

 

 

『紫雲出』

 香川県三豊郡詫間町紫雲出山弥生式遺跡の調査

1964年

発行:詫間町文化財保護委員会

執筆者:小林行雄・佐原真

    田村實造・丹信實

『会下山遺跡』

芦屋市文化財調査報告第2集

1964年

発行:芦屋市教育委員会

執筆者:村川行弘

    石野博信


      『古代文化』第54巻第4号(2002年) 特輯 弥生時代高地性集落研究の現状と課題

森岡秀人:高地性集落研究の現状と今後の展望

荒木幸治:「高地性集落」研究論―認識論的アプローチー

角南聡一郎:高地という「場」をめぐってー農耕社会との関係からみた高地性集落論―

禰宜田佳男:遺物組成からみた高地性集落の諸類型

伊藤 実:瀬戸内の高地性集落会名の一視点―芸予諸島の高地性集落を中心として―

    『古代文化』第58巻第2号(2006年) 特輯 弥生社会の群像―高地性集落研究の実態―

近藤 玲:『高地性集落』特輯に寄せて                下條信行:『高地性集落』論の今日

近藤 玲::武力への序曲―高地性集落の意義―             中村 豊:吉野川河谷における弥生集落の展開

寺前直人:ヤジリと高地性集落                    中原 計::弥生時代中期~後期の木製品の出土傾向と高地性集落

乗松真也::弥生時代中期における漁業システムの変革と『高地性集落』  小沢佳憲:北部九州の高地性集落―集落動態からの検討―

柴田昌児::中・西部瀬戸内の高地性集落と山住みの集落―特に燧灘~伊予灘・安芸灘沿岸域を中心として―

          濱田竜彦::山陰地方における弥生時代集落の立地と動態―大山山麓・中海南東岸地域を中心に―

          若林邦彦::丘陵上弥生集落と複合社会の拡大―近畿地方の事例から―

          石黒立人:弥生集落の景観構造をめぐる試論―伊勢湾周辺地域を中心に―

          高瀬克範::東京湾東岸における弥生後期から古墳前期の集落構成―『臨海型大形集落』の性質をめぐって―

          荒木幸治::移住現象からみた社会分析方法の模索            森岡秀人:高地性集落研究の今日的清算と提言の二、三―本特輯の論評にかえて―

 

『古代文化』第74巻第2号(2022年) 特輯 弥生系高地性集落の再考論(上)

<特輯 弥生系高地性集落の再考論(上)>

森岡 秀人:特輯「弥生系高地性集落の再考論(上)」に寄せて

信里 芳紀:備讃瀬戸における高地性集落とその背景

河合  忍:中部瀬戸内の高地性集落―土器編年からの再考(岡山県域)―

三好  玄:大阪湾岸の高地性集落 ―集団組成と集団関係―

中塚  武樹木年輪酸素同位体比の周期性からみた「高地性集落」の背景

若林 邦彦:大阪平野における弥生時代以後の集落移動頻度の検証―弥生高地性集落理解の前提として―

石丸恵利子:貝塚・貝層の高所形成をめぐる生活集団の性格

宇佐美智之GIS眺望分析を用いた高位置集落における眺望域の評価―中部瀬戸内地域を事例として―

 

 

『古代文化』第74巻第4号(2023年) 特輯 弥生系高地性集落の再考論(下)

<特輯 弥生系高地性集落の再考論(下)>

森岡秀人:特輯「弥生系高地性集落の再考論(下)」に寄せて

桑原久男:前期古墳の立地と高地性集落

山本 亮:列島東縁の高地性集落・高所立地集落の展開

林 大智:北陸の高地性集落と鉄製武器の普及―集落動態からの位置づけと鉄製武器の保有形態―

寺前直人: 南関東地方の弥生系高地性集落-生業・経済と集団関係-

ロラン・ネスプルス:西ヨーロッパにおける高地・丘陵性集落と集落の防禦-集落の進化・変動の比較からみた新石器時代~金属器時代ヨーロッ

          パ(前6千年紀~前1世紀)-

 

森岡秀人: 特輯論攷の論点と総括、研究展望


代表的な高地性集落

紫雲出山遺跡

(しゅうでやまいせき、「しうで」と呼ぶのは誤り)

香川県

弥生時代中期から後期初頭

三豊市詫間町大浜乙451-1

史跡名勝天然記念物

紫雲出遺跡館があり竪穴式住居、高床倉庫が復元されている。

 

会下山遺跡

(えげのやまいせき)

兵庫県
弥生時代中期~後期
芦屋市三条町
国史跡
竪穴式住居、高床倉庫が復元されている。

古曽部・芝谷遺跡

(こそべしばたにいせき)

大阪府

弥生時代後期

大阪府高槻市美しが丘1丁目他

発掘調査後消滅

田辺天神山遺跡

(たなべてんじんやまいせき)

京都府

弥生時代後期

京田辺市田辺中央

同志社大学校地内に史跡公園として整備・保存・展示


情 報


■『季刊考古学』157号、雄山閣(2021年10月)高地性集落論の新しい動き 編集 森岡秀人 が刊行されました。

■会下山遺跡が産経新聞で大きく取り上げられました。(2021年12月16日)

■大阪府立弥生文化博物館で宇佐美智之氏(立命館大学)~弥生時代講座 ’聞いてなっとく弥生の世界~で2021年10月30日(土)「GIS空間分析から読む弥生時代の集落立地と眺望」発表。

■川西市文化財資料館で「加茂遺跡絵画土器展」 開催中(会期:2020年12月16日~2021年1月31日)

https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/shiseijoho/shokai/kankouannai/1003058/1008863.html

■京都市考古資料館で、京都市、京都市考古資料館、公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所、同志社大学歴史資料館、同志社大学考古学研究室及び京都歴史文化施設クラスター実行委員会主催による合同企画展「よみがえる京都のYayoiー同大生は見た!!」開催中(会期2020年12月15日~2021年1月24日)https://www.kyoto-arc.or.jp/blog/jp-mus-exhibition/3717.html?cat=15

■神戸市立博物館 神戸の歴史展示室にて“弥生時代の高地性集落”開催中(会期:2020年7月4日~9月22日)

■2020年7月6日 MBSテレビ「Newsミント!」で城山遺跡での鉄塔工事による一部の遺構破壊について【特集】として放送されました。

■2020年6月9日(神戸新聞)「城山遺跡が鉄塔工事で遺跡破壊危機、市民が救う 芦屋市「認識甘かった」と反省 と報道されました。